日本絵画の秀逸なコレクションを誇るミネアポリス美術館の名品がそろう「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」が4月14日からサントリー美術館で開幕

アメリカ中西部ミネソタ州最大の都市ミネアポリスに1883年に設立されたミネアポリス美術館。現在では世界各地の約9万点を超える美術品を所蔵し、そのうち約2500点の浮世絵をはじめとする日本絵画のコレクションは、質・量ともに高い評価を得ている。4月14日から開幕するサントリー美術館開館60周年を記念した「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」では、ミネアポリス美術館の日本美術コレクションの中から、中世から近代にいたる日本絵画の変遷を、初の里帰り品を含む選りすぐりの優品で紹介する。
第1章 水墨画

中国唐時代から始まり、奈良時代の日本に伝えられた水墨画。鎌倉時代には南宋文化を身につけた渡来僧により、水墨画が大量に伝えられた。南宋絵画は日本国内で深く愛好され、足利将軍家に多数の名品がコレクションされることになった。その文化は徳川将軍家にも一部が継承され、南宋から元時代の絵画様式は、14〜17世紀にいたる日本絵画の核をなすひとつとなった。ここでは雪村周継や山田道安など戦国期・16世紀に活躍した絵師の水墨画を中心に紹介。
第2章 狩野派の時代

日本を代表する絵師集団である狩野派は、狩野正信(1434-1530)を始祖とし室町時代以降、常に時の権力者の庇護を受けながら発展してきた。中でも狩野元信(1477?-1559)と狩野永徳(1543-90)の活躍はめざましい。その後、江戸時代になると狩野派も本拠地を京から江戸へと移し、永徳の孫である狩野探幽(1602-74)は余白をいかした瀟洒なスタイルで狩野派に新たな魅力をもたらした。一方で永徳の門人でその画風を色濃く受け継いだ狩野山楽(1559-1635)とその養子である狩野山雪(1590-1651)らは京に留まり、探幽とは異なる世界観を生み出した。ここではミネアポリス美術館の日本絵画を代表する作品の一つである山雪の《群仙図屛風(旧・天祥院客殿襖絵)》を含み、探幽や山楽の作品を紹介。
第3章 やまと絵─景物画と物語絵─

平安時代には中国「唐(漢)」に対して日本「やまと(和)」の自覚を背景として、日本の風俗や事物を主題とした「やまと絵」が生まれ、次第に日本独自の絵画様式へと発展していった。13世紀後半に南宋朝(1127-79)の中国絵画「唐絵」が広まると、それまでの伝統的な絵画様式は「やまと絵」と称されるようになった。唐絵は水墨を主とするのに対し、やまと絵は濃厚な色彩による装飾性を特徴とする。仏教的主題を別とすると、四季の風物を中心にした襖絵や屛風絵などの大画面と、『源氏物語』に代表される古典文学を主題とする絵巻・冊子絵本などの小画面とに大きく分けることができる。ここではミネアポリス美術館に所蔵される屛風絵の優れた作品を中心に、やまと絵の魅力を紹介。
第4章 琳派

17世紀初頭に活躍した俵屋宗達(生没年不詳)を始祖とする琳派は、やまと絵や水墨画のモチーフを意匠化し、たらし込みの技法などを使った特色のある作風を生み出した。そうした作風は尾形光琳(1658-1716)へと受け継がれ、さらに光琳に私淑した酒井抱一(1761-1828)へとつながっていく。ここでは宗達や抱一、抱一の高弟・鈴木其一(1796-1858)らを中心に琳派芸術の真髄へと迫る。
第5章 浮世絵

江戸において独自に花開いた新しい芸術が、美人画・役者絵などに代表される浮世絵版画だ。菱川師宣(1618?-94)に始まると言われ、絵師・彫師・摺師の分業体制を確立し、江戸を代表する美術となった。墨摺から多色摺へと発展した浮世絵版画は「錦絵」とも呼ばれ、名所絵など新たな画題も生まれた。ここでは鳥居清長、歌麿、写楽、北斎など浮世絵を代表する絵師たちの作品を紹介。
第6章 日本の文人画〈南画〉

江戸時代中期以降に長崎を通じてもたらされた中国の文人という概念や、明・清代の中国絵画に憧れた人々によって描かれた新たな絵画である日本の文人画(南画)。当時は主流であった狩野派に変わる自由な創造性をもつ絵画を求める機運や、黄檗宗の伝来、儒学・漢詩文の普及により中国文化への理解が幅広くなっていた。日本の文人画を大成したのが池大雅(1723-76)と与謝蕪村(1716-83)。文人や中国文化への憧れを背景にしながら、日本独自の発展をみせていった。ここでは与謝蕪村や浦上春琴、谷文晁らの作品から、日本独自の文人画の世界を紹介。
第7章 画壇の革新者たち

江戸時代後期には文人画(南画)や写生画など、既存の流派や様式にとらわれない多様な作品が生まれ、伊藤若冲(1716-1800)や曾我蕭白(1730-81)に代表される「奇想」の絵師たちが活躍するようになった。ここでは若冲や蕭白に加え、多彩な江戸絵画を生み出すきっかけともなった長崎派の作品を紹介。
第8章 幕末から近代へ

明治になると西洋から「美術」という概念や油絵の具などがもたらされ、日本の美術界には伝統的な技法や画派を継承する「日本画」と、油彩や水彩といった西洋の技法を用いた「洋画」という新しいカテゴリーが生まれた。また浮世絵は新版画・創作版画の母体となり、日本の近代美術はこれまでにない広がりをみせた。ここでは海外でも高い評価を得た河鍋暁斎(1831-89)や、狩野芳崖、明治前期に渡米した青木年雄(1854-1912)らの作品を通して、幕末から近代へ向かう日本美術の幅広い魅力を紹介する。
会 期:2021年4月14日(水)~2021年6月27日(日)
休館日 :火曜日(ただし5月4日は20時まで、6月22日は18時まで開館)
開館時間:10時~18時
※金・土および4月28日(水)、5月2日(日)~4日(火・祝)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
会 場:サントリー美術館
入館料 :当日券 一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
割 引:あとろ割 国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引
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